飲食店や工場などで使われている業務用洗剤。以前は、家庭で使用されることはほとんどありませんでした。しかし、販売ルートが多様化したことにより、昨今は業務用洗剤が一般家庭で使用されることも増えてきました。

そこで、今回のコラムでは、業務用洗剤とスーパーなどで売られている家庭用洗剤の違いを解説していきます。

業務用洗剤と家庭用洗剤は何が違うの?

業務用洗剤と家庭用洗剤には、以下のような違いがあります。

  • 洗浄成分の強さ
  • 使用方法(希釈の有無)
  • 容量
  • 泡立ち
  • 溶けやすさ
  • 適切な使用量
  • 液性

洗浄成分の強さ

  • 汚れをある程度落とせる
  • 素材を傷つけない
  • 安全性に問題なく使用できる

一般的な家庭用洗剤は、上記の3点を満たすよう成分の強さに配慮して作られており、業務用洗剤に比べると洗浄力は劣ります。

一方、業務用洗剤は清掃のプロが使用することを前提として製造されているため、強力な成分でできています。

洗剤の主成分である界面活性剤、洗剤の役割を邪魔する鉄分やマグネシウムを取り除く「キレート剤」に関しては、家庭用洗剤より強力なものが使用されている場合がほとんどです。

 使用方法(希釈の有無)

主な家庭用洗剤は、RTU(Ready To Use)、すなわちすぐに使用できる状態で販売されています。そのため、洗剤の濃度を気にすることなく使用することが可能です。

一方、業務用洗剤のほとんどは水やお湯で希釈して使用することを想定しており、購入してそのまま使用することはできません。製品によって異なりますが、水で5〜200倍に薄めて使うよう注意書きがされている場合が多いです。

洗剤を希釈するのは手間のかかる作業ですが、汚れの落ちにくさに応じて濃度を調節することができるというメリットがあります。

容量

大容量で購入できる家庭用洗剤は、あまり見かけません。

しかし、業務用洗剤は5〜10L単位で購入できるものが多いです。1度に購入できる量が家庭用洗剤よりずっと多く、希釈して使用できることから、圧倒的にコストパフォーマンスに優れていると言えます。これは、業務用洗剤の大きな魅力の1つです。

ただし、原液や十分に希釈されていない溶液を家庭で使用するのは非常に危険です。あくまで、パッケージなどで推奨されている希釈の濃度をしっかり守って使うようにしてください。

泡立ち

製品によって差はありますが、業務用洗剤は家庭用洗剤に比べて泡立ちにくい場合が多いです。泡立ちが少ないと、洗剤を洗い流す水の量が少なく済むため節水に繋がるだけでなく、2度拭きする必要がない場合もあり、掃除にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。

溶けやすさ

粉末状の洗剤には、水温が低いほど溶けにくいという性質があります。家庭用洗剤は、低温の水に溶かして使用する方に配慮して、溶けやすい成分を取り入れています。

掃除のプロは洗剤をお湯で溶かして使うだろうという想定のもと、業務用洗剤は、溶けやすさを考慮した成分を含んでいないことがほとんどです。そのため、業務用洗剤は約45℃のお湯を使うとよく溶けて、洗浄力を存分に発揮してくれるでしょう。

適切な使用量

多くの洗剤には、1回あたりの適切な使用量がパッケージなどに記載されています。掃除の規模にもよりますが、1回の掃除に使うべき量は、家庭用洗剤と業務用洗剤で大きな差はありません。

液性

洗剤を分類する際には、pHという数値がよく用いられます。これは、溶液中に含まれる水素イオンの濃度を表した数値であり、14以下の数値で表されます。以下のように、pHによっておよその液性を判断することが可能です。

  • pH0~2:酸性
  • pH3~5:弱酸性
  • pH6~8:中性
  • pH9~11:弱アルカリ性
  • pH12~14:アルカリ性

安全性を考慮して作られる家庭用洗剤は弱酸性~弱アルカリ性であることが一般的ですが、業務用洗剤の場合は強力な酸性、アルカリ性のものが多くあります。強酸性、強アルカリ性の洗剤には刺激の強い成分が含まれており、安全に配慮して利用しなければなりません。

ここからは、洗剤の液性と汚れの関係について解説していきます。

洗剤の液性


洗剤と同じように、汚れも酸性、アルカリ性に分類することができます。酸性とアルカリ性は互いに打ち消し合う性質を持っているため、酸性の洗剤はアルカリ性の汚れ、アルカリ性の洗剤は酸性の汚れを落とすのに適しています。

それぞれの液性の洗剤が得意とする汚れについて、具体的にご紹介していきます。

アルカリ性洗剤

アルカリ性洗剤は、酸性の汚れを落とすのに適しています。

  • 油汚れ
  • 皮脂汚れ
  • ヤニ汚れ

日常生活の中で発生する汚れの9割近くが、皮脂や油分を由来とした酸性汚れだと言われています。油汚れや皮脂汚れは放置するほど落ちにくくなるため、非常に厄介です。家庭用洗剤で落ちそうにない汚れに対しては、業務用のアルカリ洗剤を使用するのも有効でしょう。

ただし、アルカリ性洗剤を使用できない素材があることに注意しなければなりません。アルミニウムや皮革類、銅などにアルカリ性の洗剤を使用すると、変色などを起こしてしまう可能性があります。

中性洗剤

中性洗剤は、酸性汚れとアルカリ性汚れの両方にアプローチすることができますが、洗浄力は酸性やアルカリ性の洗剤に劣ることが一般的です。しかし、肌に優しい成分でできているため、野菜や果物、赤ちゃん用品などに安全に使用できる商品が多くあります。

酸性洗剤

酸性洗剤が得意とするアルカリ性の汚れとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 水垢
  • 石鹼カス
  • 尿石
  • カルキ汚れ

お風呂やトイレの汚れの多くは、アルカリ性であることがわかります。

洗面所の鏡などは、洗剤の成分によっては素材が傷んでしまう可能性があります。使用する際には、洗剤のパッケージに書かれている注意事項を確認したり、あらかじめ目立たない所で試しに使用したりするようにしてください。

また、お伝えしているように、身の回りの汚れのほとんどはアルカリ性です。アルカリ性洗剤や中性洗剤を使用しても落ちない頑固な汚れがある時に、業務用の酸性洗剤を使用することをおすすめします。

業務用洗剤を購入できる場所

家庭用洗剤は近所にあるドラッグストアやホームセンターで簡単に購入できるのに対し、業務用洗剤を街中で見かける機会はあまりありません。

家庭で使用する場合、業務用洗剤はネット通販で購入するのが一般的です。また、近年は大きなホームセンターで販売していることもあります。

種類の豊富さで言えばネット通販が優れていますが、事前に成分などを詳しく確認したい方は、ホームセンターなどに足を運んで購入する方がベターです。

業務用洗剤を家庭で使用する際の注意点

業務用洗剤を家庭で使用する際には、以下の3点に注意しなければなりません。

  • 劇物の表記がないものを選ぶ
  • 手や顔を保護して使用する
  • 2種類以上の洗剤を混ぜない

劇物の表記がないものを選ぶ

業務用洗剤の中には、「劇物」と表記されたものがあります。これらは人体に害を及ぼす可能性のある強力な成分が含まれており、専門的な知識と技術を持つ方が取り扱うことを前提としています。そのため、一般の方が使用するのは非常に危険です。

業務用洗剤を家庭で使用する場合は、購入する前に「劇物」の表示がないかを確認しておきましょう。

手や顔を保護して使用する

洗浄力が強い業務用洗剤は、素手で触れたり目に入ったりすると非常に危険なものも少なくありません。特に、希釈する前の原液は十分注意して取り扱う必要があります。洗剤を使う時にはゴム手袋やマスク、ゴーグルを身に付け、手や顔を保護しておきましょう。

2種類以上の洗剤を混ぜない

洗剤のパッケージに「混ぜるな危険」という表記がされているのを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。異なる種類の洗剤を混ぜると、場合によっては有害なガスが発生する可能性があり非常に危険です。

例えば、塩素系漂白剤と酸性洗剤を同時に使用すると塩素ガスが発生し、目やのどに刺激を感じたり、吸い込んで肺水腫といった中毒症状を起こしてしまう恐れがあります。

異なる場所を続けて掃除する際は、2種類以上の洗剤を誤って混ぜてしまわないよう注意しましょう。また、万が一有害な気体が発生してしまってもすぐ逃がせるように、使用する場所をよく換気した上で洗剤を使用することをおすすめします。

業務用洗剤はコスパと洗浄力が魅力

業務用洗剤の大きな魅力は、洗浄力とコスパの良さです。1度に多くの量を購入し、希釈して使用できるため、買い換える手間を大きく削減することができます。

ただし、家庭用洗剤とは違って強力な成分を使っているため、使用中は安全に十分注意しなければなりません。パッケージに記載されている注意事項や希釈する濃度をしっかり守って使用してください。

家庭用洗剤の力ではどうしても落ちない頑固な汚れがある時は、業務用洗剤を使ってみるのを選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。