飲食店の排水に含まれる不純物をせき止めるグリストラップ。グリストラップは3つの槽からなり、清掃しようと思うとかなり時間がかかります。基本的には営業時間外に行うことになり、従業員の負担も大きくなります。
しかし、悪臭や害虫を防ぐためにも、グリストラップは頻繁に掃除しなければなりません。
今回のコラムでは、飲食店のグリストラップの正しい清掃法をご紹介します。飲食店で勤務する方は、ぜひチェックしてみてください。
グリストラップとは
グリストラップは、厨房の排水に含まれる油脂分や残飯、野菜くずなどを分離、収集する装置です。3つの槽に分かれており、段階的に不純物が除去されます。
第1槽
第1槽はバスケットのような形をしており、厨房からの排水が最初に通る場所です。ご飯粒より大きいサイズの残飯や生ごみといった固形物が溜まります。第1槽を通過する小さな不純物は、第2槽以降で分離されます。
第2槽
第2槽の役割は、水と油を分離することです。第2槽と第3槽の間は上部に仕切り、下部に隙間というつくりになっています。この構造と油が水に浮く性質を利用して、水と油を分離します。
第1槽から流れてきた排水を、水面に浮いた油のみ上部の仕切りでせき止め、下部の隙間から残りを第3槽に流すという仕組みです。
しかし、第2槽で排水の油分を完全に除去することはできません。
第3槽
第2槽から流れてきた排水に残る油を、第3槽で再度分離します。水と油脂を分ける原理は第2槽と同様です。油が除かれた水は、トラップ管という管から下水に流れます。
飲食店のグリストラップを放置する5つのリスク
グリストラップをきれいにするのが大変だからといって清掃せずに放置していると、飲食店に様々な悪影響が生じます。
悪臭が発生する
グリストラップを清掃しないと、溜まった残飯や油脂が腐敗して悪臭を放ちます。
厨房に悪臭が充満すると、従業員が不快な思いをして働かなければなりません。また、ホールに臭いが広がった場合、お客様の気分を害し、衛生管理が行き届いていない飲食店というイメージが生まれてしまいます。
害虫やネズミの温床になる
生ごみや油脂をグリストラップ内に放置すると、ゴキブリ、ハエといった害虫やネズミのエサとなってしまいます。営業中に害虫やネズミが客席を動き回ると、お客様に不快感を与えてせっかくの食事が台無しになってしまいます。
また、不衛生なグリストラップに住みつくゴキブリやネズミの体には、サルモネラ菌や大腸菌などの病原菌がついており、動き回るだけで店内に菌を運んでしまいます。
特にネズミは、他にも店やお客様に多くの害を与える恐れがあります。
- 至るところに糞をする
- 食材を食い荒らす
- 人を咬む
ネズミに咬まれると、鼠咬症という感染症に罹患する可能性があります。
鼠咬症を発症すると咬まれた傷口がただれて潰瘍となり、傷口周りの発疹や度重なる高熱、寒気や震えといった様々な症状が現れます。
このように、害虫やネズミは衛生面に悪影響を及ぼすだけでなく、従業員やお客様に直接危害を加える恐れもあります。ネズミや害虫の発生源になりうるグリストラップ内の生ごみや油脂を放置しないようにしましょう。
排水管の詰まりや逆流が起こる
残飯や油分が溜まりすぎると、グリストラップに繋がる排水管が詰まってしまいます。そのため、排水が通過できず逆流してしまう恐れもあります。また、排水管に溜まった油は悪臭の原因にもなります。
環境汚染に繋がる
グリストラップに油分が溜まりすぎると、新たに流れてきた排水の油分を除くのが難しくなり、油がそのまま下水に流れてしまう恐れがあります。
汚れた水が下水に流れると環境汚染にも繋がるため、下水に流す排水は油をできる限り除いた状態でなければなりません。
業者に清掃を依頼すると高額な費用がかかる
日々の清掃を怠って、汚れがひどく手が付けられない状態になった場合、グリストラップの清掃を専門の業者に依頼する事も可能ですが費用は非常に高額です。
グリストラップの大きさや状態にもよりますが、容量が250Lのグリストラップを1回清掃するのに約2〜3万円かかってしまいます。
グリストラップの正しい清掃方法と頻度
グリストラップを清潔に保つには、どれくらいのペースで清掃すればよいのでしょうか?3つの槽について、それぞれ最適な清掃方法と頻度をお伝えします。
第1層は毎日清掃する
排水が始めに通過する第1槽には、生ごみの固形物質が溜まります。生ごみは腐敗しやすいことから、基本的には毎日きれいにすることをおすすめします。
清掃の手順は以下の通りです。
- バスケットの取っ手を持ち上げ、水気をしっかり切る
- バスケットの中のごみを処分する
飲食店のグリストラップの中には、バスケットのサイズが非常に大きなものも多くあります。バスケットが大きいと持ち上げるのが大変であるため、清掃者が汚れないように注意しましょう。
また、家庭のキッチンで水切りネットを用いるように、バスケットにネットをかぶせておけば、ごみを楽に取り除くことができます。
第2層は最低でも週1回清掃する
第2槽に浮いている油脂は、グリストラップから放たれる悪臭の最たる要因です。厨房から出る排水の量によりますが、最低でも週に1回は清掃しましょう。ラーメンや焼肉を提供する飲食店は油の使用量が多いことから、より頻度を増やす必要があります。
第2槽は、水面に浮く油脂をすくい上げてきれいにします。その際もよく水を切って処理してください。
また、第1槽、第2槽の底には汚泥が溜まっています。腰を曲げて作業しなければならず負担が大きいですが、グリストラップの底から汚泥をすくい上げ、水を切って処理しましょう。
油脂や汚泥には雑菌が繁殖しているため、手ではなくひしゃく、ストレーナー(ざるのような器具)などを使ってすくうことをおすすめします。
第3層は2〜3ヶ月に1回清掃する
第3槽で清掃するのは、排水を下水に流すトラップ管です。トラップ管はすぐにひどく汚れるわけではないため、2〜3ヶ月に1回程度の清掃で十分です。
- グリストラップの蓋を外す
- トラップ管をたわしやブラシでこする
トラップ管は油脂がこびりつき、ぬめりが発生しやすくなっています。ブラシやたわしを使ってこすり取りましょう。また、管の中に汚れが溜まると詰まってしまう場合もあるため、手の届く範囲で中の油脂も落とせると良いです。
清掃する際の注意
清掃で出たごみの処理
グリストラップを清掃して出るごみは、産業廃棄物に指定されているため、ごみの処理には注意が必要です。
第1槽のバスケットから取り除いたごみは、可燃ごみとして捨てることができます。しかし、第1、2槽の底に溜まった汚泥や第2槽に浮いている油脂は、一般的に産業廃棄物に分類されます。
産業廃棄物とは、事業活動で生じる廃棄物のうち廃棄物処理法で指定されたものを指し、廃油や金属くずなどが該当します。
産業廃棄物に分類されたごみは、専門の業者に依頼して処理してもらう必要があります。不法投棄したり、認可を受けていない業者に処理してもらったりしてはいけません。
グリストラップの清掃で出たごみは容器に入れて保管し、産業廃棄物処理の認可を受けた業者に処理を依頼しましょう。
部品の破損、劣化
グリストラップを清掃するついでに、下記の部品について破損や劣化がないかチェックしましょう。
- グリストラップの蓋
- 第1槽のバスケット
- 槽の間の仕切り版
- 第3槽のトラップ管
グリストラップの蓋が劣化すると、内部の臭いが外に漏れたり、従業員が踏んでケガをしたりする恐れがあります。また、蓋に穴が開いていると害虫の通り道になりかねません。
仕切り版やトラップ管といった内部の部品が損傷すると、油脂やごみをせき止めることができなくなる可能性があります。
部品の異常を見つけたら、必ず新しいものに交換しましょう。サイズが合わないと部品が使えない場合があるため、購入する前にグリストラップのサイズを確認することをおすすめします。
こまめに清掃して悪臭を防ごう
意外と知られていないグリストラップの仕組み、正しい清掃方法を解説してきました。グリストラップの清掃は他の場所に比べて時間がかかり、体力的な負担も大きいです。しかし、定期的に清掃すれば生ごみや油脂による悪臭を防ぐことができます。
店内を清潔に保ち、お客様に気持ちよく食事してもらいましょう。