本来食べられたはずの食材が捨てられてしまう食品ロス。お金を払って仕入れている食材を無駄に捨ててしまうのは、非常にもったいないです。
食品を廃棄せざるを得ない状況が生まれる要因としては、お客様の食べ残しや食材の過剰な仕入れなどが考えられます。これらの要因に対策を講じて食品ロスを削減すると、飲食店もメリットを得ることができます。
今回のコラムでは、飲食店において食品ロスを削減する方法をご紹介していきます。
飲食店における食品ロスの現状
近年、飲食店で発生する食品ロスの量は減少傾向にあるようですが、1年でおよそ133万トンの食材が無駄に廃棄されているようです。
また、SDGs(持続可能な開発目標)が世の中に浸透しつつあり、その目標の1つとして「つくる責任 つかう責任」が提唱されています。これは、食品などの持続可能な生産消費形態を確保することを目的としています。
食品ロスの削減は、今や地球全体で進んでいる取り組みの一環です。飲食店業界においても、食品ロスを減らす動きが広まってきています。
飲食店で食品ロスが発生する原因とは
飲食店では、主に以下の3点が原因で食品ロスが発生しています。
- 仕入れすぎた食材
- 仕込みすぎた食材
- お客様の食べ残し
仕入れすぎた食材
実際に使用する分よりも多く食材を仕入れてしまい、使えないまま期限切れとなり、仕方なく廃棄するというケースです。
昨今、飲食店の売上は不安定であり、食材を適切な量で発注するのが難しくなっています。そのため、売上の予測を誤り、食材を仕入れすぎてしまうケースが増えているのが現状です。
仕込みすぎた食材
切り分けたり混ぜたりすることで、保存期間が短くなってしまう食材は多くあります。売上の予測を見誤ることで食材を過剰に仕込んでしまい、それらを使うことなく期限が過ぎてしまうことが考えられます。
また、料理の種類が多い飲食店では各メニューの出数を予想するのが難しく、使用頻度が少ない食材を中心に、多く廃棄される傾向にあるようです。
お客様の食べ残し
お客様が食べ残した料理は、そのまま廃棄されます。お客様の事情で発生した食べ残しは防ぎようがありません。しかし、小盛りメニューに対応するなど、従業員の取り組みによって防止できるケースもあります。
飲食店が食品ロス対策に取り組むメリット
食品ロスの削減に取り組むと、飲食店にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ごみ問題の緩和に貢献できる
ごみを処理する際に発生する大量の二酸化炭素は地球温暖化の一因であり、大きな問題となっています。
食品ロスを減らすことで、廃棄物全体の量が減少します。廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出量も少なくなり、地球環境に貢献することが可能です。
廃棄コストを削減できる
飲食店がごみを廃棄する際には、専門の業者に依頼することが一般的です。しかし、ごみ処理を業者に委託すると、かなり高額な費用が発生します。
食品ロスを減らすことで、業者に処理してもらう廃棄物の量が少なくなります。廃棄物が削減される分だけ、廃棄コストを減らすことが可能です。ごみ処理にかかる費用を抑えることで、お店の出費を削減できます。
食品ロスを削減する6つの対策
食品ロスを削減するために、飲食店が取り組むべき6つの対策をお伝えします。
- 仕入れや仕込みの量を記録する
- 食材の保管方法を工夫する
- メニューに料理の量を明記する
- 小盛りメニューを採用する
- 適量注文や食べきりを呼びかける
- 持ち帰りの要望に応える
仕入れや仕込みの量を記録する
- 食材を仕入れた量
- 食材を仕込んだ量
- 実際に使用した量
- 無駄に廃棄してしまった量
飲食店の売上は不安定な傾向にありますが、その中で食品ロスを削減するためには、これらをこまめに記録して管理する必要があります。得られたデータを参考にして仕入れ量を決めることで、仕入れや仕込みの量と使用量の差を小さくすることができるでしょう。
食材の保管方法を工夫する
長く保存できる食材も、保存の仕方によっては早く傷んでしまうこともあります。
- 冷蔵や冷凍で保存しなければならない食材を長時間外に放置しない
- ラップなどでしっかり密封して保管する
こうした工夫によって、食材を良い状態で長く保存することが可能です。
また、期限が早いものを先に使用したり、在庫があるのに追加で仕入れないようにしたりすると、無駄な廃棄を減らせます。これらを実践するためには、店内の在庫を正確に把握しなければなりません。
冷蔵庫や冷凍庫の整理をすることが最も有効です。食材をしまう場所を明確に決めておく、日付の早いものを手前に置くといった対策を講じましょう。保存容器などに食材の使用期限を書いたシールを貼って保管するのもおすすめです。
メニューに料理の量を明記する
メニュー表に料理の量が明記されていない場合、多くのお客様は掲載されている写真から量を推測して注文を決定します。
写真から想像できるよりも実際に提供される量が多いと、お客様が食べきれないケースが発生しやすくなります。そのため、料理の量をメニュー表にはっきりと示しておきましょう。
また、お客様の人数に対して注文量がかなり多い場合は、必要に応じて声掛けをするのも有効です。
小盛りメニューを採用する
料理の量を減らしてほしいという要望にも対応できると良いです。小盛りメニューを導入したり、要望があれば量を減らせる旨をお客様に伝えたりすることで、少量の料理を気軽に頼みやすくなります。
適量注文や食べきりを呼びかける
むやみに大量の料理を注文するお客様もいます。そのため、チラシなどによって適量の注文や食べきりの呼びかけをすることで、食べ残しを減らせる可能性が高いです。ビュッフェ形式や食べ放題のお店では、特に高い効果が期待できます。
残さず食べきったお客様に対して、割引やクーポン券といった特典を設けるのもおすすめです。
持ち帰りの要望に応える
食べきれなかった料理について、持ち帰ることができないかという要望が多くあれば、持ち帰り制度を導入しても良いかもしれません。
しかし、その場で食べることを前提に提供している料理も多くあるため、以下の5つの点に注意する必要があります。
- お客様に丁寧に説明する
- 加熱を徹底する
- 清潔な容器や箸を使用する
- 外気温を考慮する
- 注意書きを添付する
お客様に丁寧に説明する
持ち帰った料理が原因で、食中毒などの衛生トラブルが発生する可能性があります。トラブルを防止するためには、下記の内容をお客様に理解してもらわなければなりません。
- 料理の保存方法
- 安全に食べられる期限
- 衛生トラブルのリスク
これらを確実に伝え、お客様の了承を得られてから持ち帰ってもらうことを心掛けましょう。
加熱を徹底する
十分に火を通していない料理は長く保存することが難しく、持ち帰りには適しません。衛生面のリスクがとても高いため、加熱処理をしっかり行った料理以外の持ち帰りは認めないことを推奨します。
また、お客様が持ち帰る可能性がある料理は、十分に加熱してから提供しましょう。
清潔な容器や箸を使用する
容器や箸に菌が発生していると食中毒に繋がる恐れがあるため、清潔な容器や箸、スプーンなどを使用しましょう。
また、熱を持った状態で料理を保存すると、菌が繁殖するリスクが高くなります。そのため、平たい容器を使用して料理の熱が逃げやすい状態を作ることも大切です。
テーブルのお皿から持ち帰る容器に料理を移す際は、お客様が使っていた箸などではなく、新しいものを使用することが望ましいです。
外気温を考慮する
料理を安全に保存できる時間は、気温や湿度によって異なります。食中毒の原因となる菌は高温多湿な環境を好むため、梅雨時や夏の時期には保冷剤を添えて料理を冷やすといった対応が必要です。温度や湿度に応じて持ち帰りを中止しても良いでしょう。
注意書きを添付する
持ち帰る料理と一緒に、衛生トラブルのリスクや料理の取り扱いに関する注意事項をまとめた用紙を配布すると良いです。お客様に正しい方法で持ち帰ってもらえる可能性が高くなるだけでなく、トラブルが発生した場合にお店側が負うリスクを抑えることができます。
食材管理や提供方法を工夫しよう
飲食店における食品ロスを削減するための対策をお伝えしてきました。食品ロスを減らすためには、食材管理だけでなく、料理を提供する方法の工夫も必要です。
飲食店が食品ロスを減らす最大のメリットは、廃棄コストを削減できることです。また、食品ロス削減の風潮は、今後さらに高まることが予想されます。食品ロスと真摯に向き合うことは、お店の印象アップに繋がるでしょう。