異物混入は、飲食店でお客様を不快にさせてしまうトラブルの1つです。提供された料理に異物が入っていたら楽しいはずの食事が台無しになるだけでなく、お店の印象も悪化してしまうでしょう。
しかし、残念ながら飲食店において異物混入は意外と多く発生しています。混入しうる異物は多岐にわたり、完全に防ぐのは難しいです。
今回のコラムでは、飲食店の異物混入を防止する方法、そして万が一異物混入が発生した際に必要な対応もお伝えします。
飲食店で意外と多い異物混入
本来、飲食店で提供される料理に異物が入っていてはいけません。しかし、外食やデリバリーにおいて、異物混入の発生件数は意外と多いのが現状です。
6年間で1万6000件の異物混入が報告されている期間もあったようです。公表されていない事案を合わせると、さらに多く発生していると推測できます。
ほとんどの飲食店では、異物混入を防止する努力が行われているでしょう。それにも関わらず、発生を防ぎきれていないということがわかります。
飲食店で混入しやすい異物
飲食店で混入しやすい異物は、以下の5点が挙げられます。
- 従業員の体毛
- 従業員が身に付けているもの
- ほこり
- 害虫
- 調理器具や備品の一部
従業員の体毛や爪
飲食店で最も頻繁に混入する異物は、5cm未満の短い毛です。頭髪や腕の毛が作業中に抜けて、そのまま料理に入ってしまうことが原因だと考えられます。
また、爪やネイル、歯が混入するケースも少なくないようです。爪は先端がとがっているため、お客様が誤って口に入れるとケガをしてしまう恐れがあります。
従業員が身に付けているもの
従業員が手に貼る絆創膏やテーピングも、異物として混入することがあります。
飲食店で作業していると手が水にぬれ、絆創膏やテーピングが取れやすい状態になります。作業をしているうちに指から外れ、気づかずお客様に提供してしまうという事例は少なくありません。
ほこり
空気中を舞うホコリが料理に入ってしまうケースもあるようです。主な原因は、蓋をせずに調味料や料理を放置してしまうことでしょう。
小さいホコリは従業員が発見しづらく、気づかずお客様に提供してしまいやすいため、注意が必要です。
害虫
害虫が混入していると、お客様は大きなショックを受けてしまうでしょう。虫が苦手なお客様にとってはトラウマになりかねないため、十分に警戒することが求められます。
また、ゴキブリやハエなどは菌やウイルスを媒介するため、料理の中に混入すると衛生状態が悪く危険です。
要因としては、食材を仕入れた段階で害虫が混入していたり、お店にいた害虫が作業中に入り込んだりすることが考えられます。
調理器具や備品の一部
厨房で作業をしている間には、下記のような異物の混入が考えられます。
- 袋の切れ端
- 調理器具や食器の破片
- 清掃に使うブラシやスポンジの欠片
- 卵の殻や魚の骨
作業に使用する備品からの混入を防ぐのは困難です。また、袋の切れ端などの透明な異物は一目で判別しづらく、お客様に提供する前に発見するのが難しいと言えます。
飲食店での異物混入を防止する5つの対策
飲食店では様々な異物が混入しうるということがわかりました。ここからは、異物混入の件数を減らすために気を付けるべきことをお伝えしていきます。
食材の受け取りに注意する
段ボールや袋に入った状態で食材が搬入される場合は、外装に害虫が隠れている可能性があります。段ボールに入った状態で食材を厨房に持ち込むのを避ける、害虫がいないかを確認してから冷蔵庫などに収納するといった対策が必要です。
また、害虫に食材を食い荒らされていることも考えられるため、納品の前に必ず食材の状態もチェックしましょう。これらのチェックを厨房の外で行うと、害虫が厨房へ侵入するのを防ぐことができます。
調理器具の管理に気を配る
調理器具のメンテナンスをこまめに実施することで、劣化した調理器具の破片の混入を防止できます。
調理器具を長い間使用していると、ネジなどの部品が取れたり、こびりついている汚れが落ちたりしてしまうことがあります。頻繁に使用するフライパンやスライサーといった器具は、チェックリストを作成するなどして定期的に点検すると良いです。
調理に使わない備品の管理に注意する
調理に使用しない道具は、食材のそばで保管しないよう心掛けましょう。
掃除道具は、厨房の清掃をする際に食材の近くで使用しなければなりません。ボロボロになったスポンジの欠片やブラシの毛が料理に混入する事例は比較的多いため、注意が必要です。
備品を使用したら、できる限り早く元の場所に戻すことを従業員に周知しましょう。また、万が一料理に混入しても気づきやすいように、毛の色が青や緑のブラシを使用することをおすすめします。
従業員の衛生管理を徹底する
先述したように、従業員の身体から異物が混入するケースは多くあります。従業員一人一人の身だしなみを徹底することで対策しましょう。
身だしなみを整える上で重要なポイントは、下記の通りです。
- 爪を短く切る
- 長い髪はまとめる
- 帽子をかぶって髪を入れ込む
- ヒゲを剃る
また、従業員が身につけるものも管理できるとベターです。絆創膏などの混入を避けるため、青のような目立つ色の絆創膏を使ってもらうのも有効です。
日々の清掃に力を入れる
日々の清掃をしっかり行うことでホコリや害虫の発生を抑え、異物混入の原因を減らせます。
特に、食材を保管する冷蔵庫や調理するコンロやレンジは念入りに清掃してください。また、排水溝は害虫の温床となりやすい場所であるため、頻繁に掃除しましょう。
異物混入が発生した際に取るべき対応
ご紹介した対策を徹底して行っても、異物混入を完全になくすことは難しいです。異物混入が起こってしまった際には、お客様への誠実な対応が求められます。お客様をより不快にさせない対応の手順をご紹介します。
まずお客様に謝罪する
お客様から異物混入の報告があったら、真っ先に謝罪をしてください。最初の対応が悪いと、その後どれだけ良い対応をしてもお客様の印象は悪いままでしょう。
誰が最初の対応を行っても問題なく進められるように、最初に取るべき行動を、従業員全員に把握してもらうことが必要です。
すぐに責任者に報告する
最初にお客様対応を行ったのが責任者ではなかった場合は、責任者に確認する旨をお客様に伝え、直ちに報告しましょう。責任者以外の従業員が勝手に動くことは避けなければなりません。
責任者への報告も、従業員に徹底してもらいましょう。また、1人以上の責任者が現場の近くにいる状態を保てるようシフトを管理することも大切です。
料理を作り直す
報告を受けた責任者は、まず、料理の作り直しを希望するかどうかをお客様に確認します。作り直しを希望された場合は、他の注文が入っていたとしても、作り直す料理を優先して用意しましょう。
お客様が再提供を希望されない場合は、無理やり料理を提供するのではなく、謝罪に徹してください。
料金の対応を説明する
食事の料金についての対処を、お客様と相談して決定します。料金をもらわないことを、お店側から提案するのが一般的です。
次回以降使えるクーポンをお渡しする飲食店もあります。そういった場合は、全てのお客様に対して同じように対処したり、チェーン店において全店舗で内容を統一したりすることで、お客様に不公平感を与えないよう心掛けましょう。
原因を究明する
異物混入が発生してしまった原因を必ず調査してください。お客様に説明したり、再発防止に役立てたりするためです。
チェーン店などでは、後日本社に報告書を提出しなければならない場合もあるため、誰が聞いても納得できるような結論を出しておきましょう。
退店時や後日に改めて謝罪する
お客様が退店されるのに気づいたら、責任者に知らせるということを従業員に伝えておきましょう。そして、対応した従業員と責任者で改めて謝罪します。
お客様がケガをしてしまったなどの場合には、後日菓子折りを渡してお詫びするケースも少なくありません。そういった場合は正装で出向き、真摯に謝罪してください。また、治療費が発生した際には、お店が負担することが一般的です。
徹底した対策と真摯な対応を取ろう
異物混入の発生を防ぐのは至難の業ですが、少しでも件数を減らせるように、徹底した対策を取りましょう。また、万が一異物混入が発生してしまった場合は、既に嫌な思いをしているお客様をこれ以上不快にさせないように対応することが求められます。
身だしなみや備品の管理については、従業員の意識改革が欠かせません。また、料理を提供する前に一呼吸置いて、本当に異物が紛れていないかどうかを確認するといった細かい習慣を取り入れることも、異物混入の防止に繋がります。