飲食店やスーパーに設置されている業務用冷蔵庫。食品を貯蔵する以上、清潔な状態を保つ必要があります。また、庫内がうまく冷えない、霜が付着するといったトラブルを防止しなければなりません。
今回のコラムでは、業務用冷蔵庫を正しく清掃する方法について解説していきます。トラブルを防止して長く使い続けるためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
業務用冷蔵庫を清掃する重要性とは
業務用冷蔵庫の内部には肉、魚のドリップや野菜の泥がついてしまうため、カビや雑菌が発生しやすくなっています。冷蔵庫の内部は約-5℃、冷凍庫は約-20℃と低い温度に保たれていますが、低温でも死滅しない菌は少なくありません。
そのため、業務用冷蔵庫の汚れを放置すると、増殖した雑菌やカビによって悪臭が生じたり、食品に菌が紛れ込んで食中毒が発生したりする恐れがあります。
業務用冷蔵庫を清掃することは、食品や従業員の衛生状態を管理し、食品を手に取るお客様に悪影響を及ぼさないために非常に重要です。
業務用冷蔵庫の正しい清掃方法
以下に示す業務用冷蔵庫の部品について、それぞれ正しい清掃方法を解説していきます。
- 外装・取っ手
- 扉パッキン
- 庫内・棚網
- コンデンサー
- コンプレッサー
- ドレンホース・ドレンパン
外装・取っ手
外装は柔らかい布で水拭きをしましょう。汚れがひどい場合は、中性洗剤をつけたスポンジで優しくこすってください。スポンジで強くこすったり、タワシなどの硬い道具を使ったりすると、傷やサビの原因になってしまう可能性があります。
取っ手部分は中性洗剤を染み込ませたふきんで拭いた後、水拭き、乾拭きをしてきれいにします。仕上げにアルコールスプレーでしっかり除菌しておくと安心です。
外装や取っ手は、毎日清掃して清潔な状態を保つのが望ましいです。特に、取っ手は多数の人が頻繁に触れる箇所であるため、よりこまめに清掃することをおすすめします。
扉パッキン
つい見落としがちな、扉の周りについたパッキン。清掃せずに放置するとどんどん劣化が進み、庫内の温度が下がらなくなったり、余分な電気代が発生したりする場合があります。できる限り毎日清掃しましょう。
ぬるま湯を染み込ませた柔らかい布で汚れを拭き取ります。頑固な汚れがある場合は、中性洗剤を使ってみてください。
この時、樹脂汚れに対応した溶剤を含む洗剤を使うと、パッキンが破損してしまう恐れがあります。使用する洗剤の成分は事前に確認しておくと良いです。
庫内・棚網
庫内の食品を全て取り出し、棚網を外して清掃します。基本的には、柔らかい布やスポンジで水拭き、乾拭きをしてください。汚れが頑固な場合は、洗剤を使用してみてください。食品に触れても安全な成分の洗剤を選ぶと安心です。
冷蔵庫の中に水気が残っていると冷却機に霜が付着してしまうことがあるため、念入りに拭き取る必要があります。また、内部にある排水溝が汚れで詰まってしまわないように、庫内を水で流すのは避けましょう。
コンプレッサー
コンプレッサーは冷却機能を管理しています。業務用冷蔵庫の裏面に設置されていることが多く、清掃するのはかなり負担の大きい作業です。
基本的には、庫内の温度が下がらなくなってきたと感じたタイミングで清掃すれば問題ありません。業務用冷蔵庫のプラグを抜き、コンプレッサーについているホコリを掃除機で吸い込んで清掃します。
コンデンサー
コンデンサーの手前に設置されているフィルターを清掃せずに放置しておくと、ホコリや汚れで詰まってしまいます。コンデンサーからの熱をうまく放出できず、冷蔵庫内の温度が下がらなくなってしまうかもしれません。
フィルターを業務用冷蔵庫から取り外し、たわしなどで水洗いします。汚れがなかなか取れない時は、中性洗剤を使用してスポンジでこすってみてください。
ドレンホース・ドレンパン
ドレンホースは、庫内の溶けた霜を水として排出する箇所で、冷蔵庫の内部にある排水口と繋がっています。ストローがついたボトルなどを使って、排水口へ少しずつ水を流してきれいにしてください。
また、排水を貯めておくドレンパンが搭載された業務用冷蔵庫もあります。ドレンパンに溜まった水を放置しておくと、カビや害虫の温床になりかねません。水を捨ててから中性洗剤でしっかりと洗い、乾燥させてから元の位置に戻しておきましょう。
業務用冷蔵庫が冷えなくなる原因とは
業務用冷蔵庫を使用する上で最も多いトラブルは、庫内がうまく冷えなくなることです。原因は必ずしも故障ではなく、業者に修理を依頼しなくても解決できるケースが多くあります。
自分で解決できる場合は、主に以下の3つの原因が考えられます。
- フィルターが機能していない
- 庫内に食材を詰めすぎている
- 庫内や扉に霜が付着する
フィルターが機能していない
コンデンサーのフィルターが機能しないと熱がうまく放出されず、冷却機能に支障をきたしてしまうことがあります。以下のような原因が、フィルターの働きを妨げているかもしれません。
- フィルターの近くに物を置きすぎている
- フィルターが詰まっている
- 周囲の温度が異常に高い
庫内に食品を詰めすぎている
冷蔵庫の内部では、冷気が円を描くように循環しています。そのため、冷たい空気を供給する冷風口の前に多くの食品を置くと、冷気の流れが妨げられて食品を十分に冷やすことができません。
庫内や扉に霜が付着する
- 頻繁に、あるいは長時間ドアを開けている
- 扉のパッキンが劣化している
- 排水口から外気が侵入している
上記のような要因で庫内の温度が上昇すると、内部にある冷却機との温度差が生じて霜が発生し、冷風口が塞がってしまう場合があります。冷却効率が悪くなり、余分な電気代が発生してしまいます。
業務用冷蔵庫を使用する際の注意
ご紹介したようなトラブルの発生を防止するために、以下の3点に注意することが大切です。
- 適切な温度設定
- 周囲に物を置かない
- 庫内の環境をこまめに確認する
適切な温度設定
食品を適切な温度で管理できるように、多くの業務用冷蔵庫には庫内の温度を表示する画面がついています。庫内の温度が上昇して霜が発生するのを防ぐため、冷蔵室は10℃以下、冷凍室は-15℃以下を保つことを意識して温度管理を行いましょう。
温度上昇を抑えるため、扉を何度も無駄に開けたり、開けっ放しにしたりしないよう心掛けることも大切です。
周囲に物を置かない
先述したように、業務用冷蔵庫の周りに物が置いてあると、熱の放出が妨げられてしまう場合があります。メーカーや大きさによって異なりますが、冷蔵庫の上部には約50cm、前後左右には5mm以上のスペースを空けておくようにしてください。
庫内の環境をこまめに確認する
庫内に物が詰め込まれすぎていないかをこまめに確認しましょう。大量の食品を保存する場合は、「庫内の8割が埋まる程度」を目安として量を調整してみてください。
また、庫内に発生した霜で冷風口が塞がれていないかを確認することも大切です。冷却機能に支障が出ているケースでは、以下のような手順で霜を除去する必要があります。
- 保管していた食品を全て外に出す
- 庫内や周りの床に乾いたぞうきんを置く
- 冷蔵庫の電源を切って霜が溶けるのを待つ
- 水分を拭き取り、冷蔵庫の電源を入れて食品を元の場所に戻す
霜が溶け切っていない状態で無理に取り除こうとすると、霜のとがった部分で手をけがしてしまう恐れがあります。霜が完全に溶けて液状になってから霜取りを行いましょう。
日々のお手入れで冷蔵庫を長持ちさせよう
業務用冷蔵庫の一般的な耐用年数は約6〜8年だと言われていますが、冷却機能に関わる部品のメンテナンスを適切に実施すれば、10年程度使い続けることも可能です。
こまめに清掃することで業務用冷蔵庫を清潔に保ち、良い衛生状態で食品を管理していきましょう。