飲食店では日々やるべき業務が忙しく、気が付けば黒ずみや油汚れが溜まってしまっていることが多いのではないでしょうか。そんな時に一役買ってくれるのが業務用洗剤です。頑固な汚れを一気に洗い流してくれます。

ですが、洗剤の選び方や使い方がわからないという方も少なくありません。そこで本記事では業務用洗剤のいろはから具体的な使用方法まで幅広く説明していきます。

業務用洗剤の液性について

業務用洗剤の液性は大きく分けて3つあるので、1つずつ説明します。

洗剤の液性ごとの特徴を押さえましょう。

酸性

ほとんどの汚れは中性やアルカリ性の洗剤で落ちるので、残った汚れを酸性の洗剤で落としていくというイメージになります。こびりついた石鹸のカスや水垢・湯垢に有効です。

その一方、酸性の洗剤は天然石でできたタイルや金属に対しては与えるダメージが大きく、弱酸性の洗剤も塩素系漂白剤を混ぜると有毒ガスが発生してしまうため、注意が必要です。

中性

中性洗剤は酸性の汚れとアルカリ性の汚れを中和しながら落とすのが特徴になります。軽度の汚れであれば酸性・アルカリ性、どちらの汚れにも対応できるのが中性洗剤の魅力です。手垢や皮脂汚れといったちょっとした汚れを落とすことを得意とします。

ただし、洗浄力という点ではアルカリ性洗剤に比べると劣ってしまうのが注意点です。人間の肌は弱酸性であるため、中性洗剤が手への刺激を最も軽減できるというメリットを持ち合わせています。食器洗い用の洗剤は中性のものが多いです。

アルカリ性

日常生活においてほとんどの汚れはアルカリ性洗剤で取れると言われるほど、汚れ掃除において大活躍するのがアルカリ性洗剤です。人間が現代社会で生活する上で発生する汚れのほとんどが皮脂や油汚れといった酸性の汚れであるため、逆の性質であるアルカリ性洗剤が活躍します。

ただし、材質や肌にダメージを与えやすく、弱アルカリ性でも皮膚や目に与える刺激が強いという点には注意しなければいけません。飲食店特有のしつこい汚れに対して効果的である反面、塗料を剥がしてしまう恐れや人体へのダメージも大きくなりかねないので、使用方法には十分に気を付けましょう。

業務用洗剤の種類と選び方

飲食店に掃除すべき場所がたくさんあることに加え、業務用洗剤の種類が多いのが現状です。「どの洗剤を選べばいいのかわからなくて困る!」という方は以下の選び方を参考にしてみてください。

  • 食器用洗剤
  • 掃除用洗剤
  • メーカー

食器用洗剤

食器用洗剤をお探しの方には中性、もしくは、弱アルカリ性の洗剤をおすすめします。より高い洗浄力をお求めの場合は弱アルカリ性の洗剤を選びましょう。界面活性剤の量が洗浄力に比例しますので、選ぶ際は界面活性剤に着目してみてください。

ただし、上でも触れたように、洗浄力が高い分、肌荒れの起こりやすさに繋がるので、洗浄力と肌荒れの2点に注意しましょう。

掃除用洗剤

飲食店の厨房の掃除には、水回りに効果的な酸性洗剤をおすすめします。先述の通り、水垢や石鹸のカスはほとんどがアルカリ性なので、酸性洗剤が効果を発揮しやすくなります。

一方で、床などの頑固な油汚れを落としたい場合にはアルカリ性洗剤を選びましょう。洗浄力が高いため、こすり過ぎなどによる材質へのダメージには気を付けながら使用してください。

メーカー

メーカーで選ぶというのも選択肢の一つです。

メーカーによって販売している洗剤に特徴があり、現在使用しているメーカーが販売しているものを購入することで、購入後のトラブルを減らせます。また、信頼や安心という面で人気の高いメーカーの商品を選ぶのも1つの手です。

油汚れの清掃の基本的な流れとコツ

中華料理店などの油を多く使う飲食店を運営する上で、油汚れの落とし方に頭を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。そんな悩める飲食店の店長や経営者の方に、基本的な油汚れの落とし方の手順とコツをお伝えしていきます。

  1. 洗剤をかける
  2. 汚れた部分をこする
  3. すすぐ

1.洗剤をかける

まず最初のステップとして、清掃箇所に付着しているベタベタな油汚れに直接洗剤をかけます。

油の粒子と空気中のホコリが付着することで、それが積み重なってベタつきを生み出しています。キッチン周りだけでなく、床や壁にもベタベタな油汚れがあるのはそのためです。厄介な油汚れにはこすったりする前に洗剤を直接かけることが重要になります。

2.汚れた部分をこする

2つ目のステップは「こする」ことです。

多くの方は最初に水をかけて、こすって汚れを落とそうとするのですが、飲食店の頑固な油汚れは水に馴染みにくいため、なかなか落ちてくれません。一方で、洗剤に含まれる界面活性剤は油に馴染みやすく、固まった油汚れも柔らかくしてくれるので、洗剤をかけてこすりさえすれば簡単に落ちてくれます。

ただし、この落とし方でもとれない頑固な汚れもあります。その時は、ボウルに洗剤とお湯を入れてつけ置きしてみたり、洗剤をかけてから30分ほど放置してみたりすると落ちやすくなりますので、実践してみてください。

3.すすぐ

最後はすすぎです。コツとしては、ただすすぐだけではなく、スポンジなどで軽くこすりながらすすぐということが挙げられます。

また、水ではなくお湯を使って洗ってみましょう。特に、冬場に水を使うと、水が冷えて汚れも固まりやすくなってしまっています。そのため、お湯と洗剤を組み合わせることで汚れが落ちやすくなります。

ぜひ参考にしてみてください。

飲食店の場所別お掃除ポイント!

ここからは飲食店内の場所ごとに清掃のポイントを説明します。場所ごとの汚れの特徴を捉え、効率的にきれいにしましょう。

キッチン

油汚れが一番溜まりやすいキッチン周りから解説していきます。

換気扇

換気扇掃除用の洗剤は中性・アルカリ性のものが多いのですが、油汚れを徹底的に落としたいのであればアルカリ性のものをおすすめします。また、研磨剤が含まれている洗剤を使うと頑固な汚れもスッキリ落とせます。

掃除の流れとしては、まず、取り外せる部分は全て取り外して、つけ置き洗いをします。そして最後にカバーやフィルターを掃除して完了となります。

ポイントとしては、つけ置き洗いの時に大きめのバケツやビニールに換気扇を入れて、40〜50℃のお湯を使うことと、重曹を利用することです。

重曹はアルカリ性の代表格と言われており、重曹をふりかけて3時間ほど置いておくときれいに汚れが落ちます。頑固な汚れには多めに重曹をふりかけましょう。落ちた重曹は水に流すと詰まる可能性があるので、ビニール袋や不要な紙に包んでゴミとして捨ててください。

コンロ周り

コンロの天板はキッチン周りでも一番油汚れが溜まりやすいです。油の飛び散りや鍋の吹きこぼれなどを放置していると、非常に落ちにくい汚れとなってしまいます。

まずは天板全体にアルカリ性洗剤を塗り広げましょう。凹凸が多いので、はけを使って隅々まで塗り広げることを意識してください。そしてブラシを使って汚れをほぐし、スポンジでこすりましょう。最後にコンロ全体を濡れた布巾で拭いて終了です。

一度では落ちない汚れには、再びアルカリ性の洗剤を塗り、ラップで覆いましょう。ラップが洗剤が乾いて蒸発するのを防いでくれるので、汚れが落ちやすくなる可能性があります。

冷蔵庫

冷蔵庫には中性洗剤を使いましょう。アルカリ性洗剤を使ってしまうと材質を痛めてしまう可能性があります。

冷蔵庫の掃除の手順は、まず電源を切り、中身を空にします。それからぬるま湯で薄めた中性洗剤を使い、布巾で庫内・外側を万遍なく拭いてください。最後に乾拭きで水気をとって終了です。

冷蔵庫は料理の油や野菜についた泥、ドリップ(肉や魚から出る液体)によって悪臭や雑菌が発生していることがあります。丁寧に掃除をしましょう。

テーブル・椅子

テーブルは、テーブルの上はもちろん、縁にも汚れが残りやすいです。洗剤とダスターでよく拭きとってください。ダスターは使うたびに洗うようにしましょう。汚れたダスターで掃除してもテーブルに汚れが付いてしまいます。

椅子も見落としがちですが、布製のものは汚れが取れにくく、シミにもなりやすいため、不潔感が出てしまいます。脱臭洗剤を水で溶かし、スポンジにつけて軽くこするようにして汚れを落とすのがポイントです。

床はお客様の目につきやすく、汚れていると飲食店の印象に大きく影響を与えてしまいます。店の印象を良くするためにも常にきれいにすることを心掛けましょう。

ハードフロア

タイルやリノリウムといったハードフロアの床には、油汚れに強くて脱臭効果のある洗剤を使いましょう。ただし、洗剤を撒く前にゴミやほこりを取り除くことを忘れないようにしてください。

また、洗剤のついた床は非常に滑りやすくなっていますので、洗剤を撒いてモップ掛けをした後は必ず乾拭きをしましょう。

カーペット

カーペットの床は、まず掃除機でゴミやほこりを取り除き、黒ずみには中性洗剤を含んだ布巾で対応しましょう。シミができた際には、ブラシを使って表面の毛を逆立ててから洗剤をかけると落ちやすくなります。

飲食店で業務用洗剤を使用する際のポイント

業務用洗剤は頑固な汚れをしっかり落とす強力な効果がある一方で、取り扱いには注意が必要です。使い方を間違えると大きな被害を生むこともありますので、ここで注意すべきポイントをおさらいしておきましょう。

使用過多にならないようにする

あまりにも大量に業務用洗剤を使うと、床や機器に界面活性剤などの成分が残ってしまい、洗ったはずの床などがベタつくという現象が起こってしまいます。

洗剤の量を適量で抑えられない原因として、飲食店に置いている洗剤の種類が多すぎることが挙げられます。入ったばかりのアルバイトや外国人の従業員の方にとって、全ての洗剤の適量を覚えるのは至難の業です。

使用の際のマニュアルを作る、掃除は決まった人のみが行うなどの対策が必要になってくる部分です。

普段から汚れ防止の対策をする

汚れの予防には普段からのこまめな清掃が一番です。しかし、忙しくて頻繁にはできないという飲食店経営者の方は多いと思います。そこでおすすめなのが、コートやカバーの設置です。

コートやカバーを設置すると、それらの上に汚れが付着しますので、後々掃除がしやすくなります。また、使い捨てであれば汚れがひどくても捨てるだけで済むので、落とし方に悩むことがなくなります。

手荒れ対策をする

界面活性剤を多く含む洗剤は洗浄力が強い分、肌への刺激が強くなります。あまりにも手荒れがひどくなったり、慢性的に悩みを抱えることがあれば、洗剤を見直してみたり、清掃の際はゴム手袋を付けて作業をするなどの対策が必要です。

使用する洗剤等の用途・使用方法を必ず守る

当たり前ですが、使用方法は必ず守ってください。

しぶとい汚れだからといって用量を大幅に超えて使用したり、注意事項をよく読まず適当に使っていると、人体を害したり、大きな事故につながる可能性も否めません。用法・用量は絶対に守りましょう。

まとめ

液体洗剤

飲食店を経営していく上では汚れとは切っても切れない関係にあり、誰もが時間とコストを費やしている部分になります。場所や機器ごとに効率的な清掃をすることで、他の作業に時間が回せたり、お店のイメージ改善にも繋がります。本記事を参考に、洗剤の使い方や注意事項を把握し、魅力的な飲食店の経営を実現しましょう。